憑の里
- peregrinatio
- 2016年2月8日
- 読了時間: 4分
失業期間の有効利用としてちょっとした学校に通っているのだが、そこで「店舗経営学」を教えていただいている方に遠足に連れて行ってもらった。
この方はミスタードーナッツ店長歴ウン十年の果てに会社を辞し、現在飲食店アドバイザーとして活躍中の、大変個性的な方。
伊藤清志先生のブログ http://ameblo.jp/kal45/
塩尻市南方の「北小野」で、ワイナリー設立を志してぶどう樹の栽培を始めた人間がいるので、紹介したいと仰っていただいたのだ。
というわけで、伊藤先生と、同じ講座を受けているクラスメイトのセミプロ菓子職人、朝日村T嬢、そしてワタクシというメンバーで北小野地区を訪れた。
小野地区は周囲を山に囲まれた小盆地。信州二ノ宮とされる、矢彦・小野の両神社があり、格式の高い土地柄だ。谷間の街道沿いには古いお屋敷群が立ち並び、なかなかの街並み景観が形成されている。信州の中では以前から好きな街並みのひとつ。
この小さな盆地は、戦国時代末期だか江戸時代初期だか、それぐらい古い時代に南北で分断されてしまい、今でも北側が「塩尻市北小野」、南側が「辰野町小野」となっている。
表題の読み方は「たのめのさと」。枕草子にも出てくる小野地区の古い地名だそうだ。

今回お邪魔した畑は、谷間を貫く街道(R158)の西側の斜面にそびえる霧訪山の麓にあった。
ここでワイナリー設立を目論んでいるのは、古田学さん。
この地区の耕作放棄地や休耕地の再生・活性化を目指す地域の取り組みの中で、この斜面一体を葡萄畑に変え、ワイナリー設立を目論むことに至った、というのがざっくりとした説明。
現在はごく一部に樹が植えられているだけだが、ゆくゆくは20haあるこの土地をぶどうの樹で埋め尽くし、何軒ものワイナリーが点在する「ワインの里」にしたいという壮大な夢を語っていただいた。さらにこの土地を「世界の絶景100選」のひとつにしたいという、なんともすごい夢も。
しかし高台からこの斜面全体がぶどうの葉で被われた景色を想像すると、そんなに途方もない夢と言う訳でもない気がしてくる。
たしかに街道筋を車で通過しているだけだと狭い谷間という印象だったが、この斜面に立ってみるとその印象を覆す広々とした景観が素晴らしい。我々が畑で立ち話をしているのを、霧訪山から降りてきたカモシカが眺めているという自然の豊かさも魅力だ。
標高800mの南東向きの斜面に植えられているのはメルロ。白品種はまずはシャルドネと、冷涼地に適した種ということでゲヴュルツトラミネールも考えているとのこと。
ワタクシ自身この「小野」という土地に関心があり、知識を持っていたおかげで、古田さんとは異常に話が合って盛り上がった。古田さんはよくもまあこんなマイナーな土地柄に関してマニアックな知識を持っている奴がいるもんだと、世の中ヒマな奴がいるもんだと思われたに違いない。
その後は4人でランチ。場所は「辰野町小野」のこめはなや。
自家栽培や契約農家栽培の素材にこだわったごはんやさんだ。

頂いたのは「チキンカレー」。
本格的カリーな風貌をしているが、スパイシーさはそれほどでもなく、野菜の甘味が感じられるやさしい味。
ちなみにここで小野豆知識をひとつ。
住民感覚的には一つの地区であるのに、行政区が二つに分かれている小野。子供たちの学校はどうなっているのだろうか?
小中学校はだいたい市長村立なのだが、この狭く人工希薄な地域に2校づつという非効率なことをしているのだろうか?それとも長距離をスクールバスでそれぞれの自治体の学校に通学しているとか?
答えは学校名にあった。
「塩尻市辰野町小(中)学校組合立 両小野小(中)学校」。
「組合立」の学校なんて、とんでもなくレアな形態なんじゃないか?
ともあれ素晴らしい工夫だと思う。
日本全体が合併合併で大手自治体に飲み込まれていく中、他所でもこういう風に、小規模自治体同士が手を組む形で自治と独自性を守る、というアイデアは出てこなかったのだろうか、とも思う。
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